物語る亀

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物語愛好者の雑文

マイ・インターン感想 アラフォー女性の『完璧な』おじいちゃん

 だいぶ前に見たマイ・インターンの作品感想を上げていく。

 

 もともと今作は評価が高いという理由で見に行ったので、事前情報をほとんど見ていなかった。私は気難しいバリバリ働くアラフォーの女性と、明らかに引退したような歳頃のおじいちゃんが巻き起こす、革新的なことばかりする会社の中で温故知新の精神が混じりあい、全く新しいことが起こる作品と思っていた。

 が……それが全くの間違いだった……

 

 

 デニーロの演じる70歳のおじいちゃんが完璧超人で、ITだってちょっとならえばできちゃうし、データを見ればそれを分析できる、運転すれば最短ルートがどこにあるかわかるし、女性にモテモテ、運動能力もこの年代にしては高い。人の機微に鋭すぎるくらいで、誰の話も聞いてあげて適切なアドバイス、紳士。見事に欠点のない主人公で歳こそ違うが『俺強ぇ』系の主人公みたいだ。

 その能力はあまりにも欠点がなさすぎて逆に怖くなってくるほど。しかもお話が全てうまく回りすぎてご都合主義の連続に見えなくもない。
 

 例えば昔浮気して奥さんとイザコザがあったとか、ITは弱いとか、料理を作るセンスがないとか、おならが臭いとか、そういった欠点の一つもあればもっと愛せたけれど、さすがにこの主人公には感情移入もできない。

 ヒロインの社長はすごく頑張り屋で、空回りもするけれども美しくて家族思い。けれども時間はないから旦那との時間はなかなか取れず……

 では他のインターンで雇った老人たちも経験豊富だから完璧超人ばかりかと思えば、出番もほとんどなく、あったとしてもいかにも使えないご老体でボランティアで雇ってますよ感がありありと出ているし、主人公の天才性を引き立たせるための登場人物たちばかり。基本的には善良だし、それが普通の姿だと思うから苛立ちはしないが、それが余計におじいちゃんの有能性を引き立たせるためのものにしか思えない。
 おじいちゃんでも社会のために役に立てるよ、とか、新しい価値観との遭遇で新しい風を巻き起こす、のような内容だと思っていたけれども、あんな完璧なおじいちゃんなら私の会社でも欲しい。
 

 当たり前ながらこの作品は『アラフォーの家庭に仕事に奮闘する女性を応援する』映画である。だからそこに出てくるのは、ほとんど全ての配役が彼女にとって『都合のいい』相手である。優しくて彼女を支えてくれる旦那、特別有能ではないかもしれないが善良な部下、可愛い子供……

 結局本作を見ると俺強ぇ系の主人公だったり、完璧な女の子が近くにいる最近のアニメと同じにしか思えないのだ。これが十代の少年少女でファンタジーな世界だったらアニメになり、アラフォーのバリバリ働くキャリアウーマンであれば本作になる。結局のところ物語のためのキャラクターであり、物語のための都合の良い設定だ。

 もちろん作品としては面白いし、私がこの映画を見るに値しない、ターゲット層から外れているのは間違いない。そんな人間が感想を言うこと自体が間違いかもしれない。ハーレムもののアニメや漫画を見てつまらない、あんな女の子がいるはずないとおじいちゃんが言うようなものかもしれない。

 

 多分頑張りたい女性が見ると勇気つけられると思う。

 ただ、それを言ったら仕事と家庭に頑張る男性の作品があってもいいのになぁ……

 

 

マイ・インターン(字幕版)

マイ・インターン(字幕版)